AIに自分でプロンプトを書かせるには|Claudeのルーティン・記憶・dreamingを公式資料で整理
AIに自分でプロンプトを書かせるとは、人が毎回プロンプトを打つ代わりに、Claude に Claude Code へのプロンプトを出させる使い方のことです。 Anthropic は2026年5月19日に開幕した Code w/ Claude London の基調講演で、この使い方を標準だと示しました。 プロンプトを出す役は、日時、API、GitHub の3種類のきっかけで動くルーティンを作って Claude に渡します。 同じ失敗をくり返させないために、エージェントには記憶を持たせます。 記憶がたまって乱れたら、dreaming で過去のセッション1〜100件を読み返させて記憶を整理します。
自走ループの考え方そのものは自走ループとはにまとめています。
「AIに自分でプロンプトを書かせる」は Anthropic の公式の方針なのか
はい。Anthropic は、人が Claude Code にプロンプトを打つのではなく、Claude にプロンプトを出させるのを標準と考えています。 2026年5月19日に開幕した Code w/ Claude London の基調講演で、Claude Code の責任者 Boris Cherny は次のように話しました(出典1の44分49秒、出典6)。
標準はもう「自分が Claude Code にプロンプトを出す」ではない。 標準は「Claude に Claude Code へプロンプトを出させる」だ。
同じ講演で、Boris Cherny は、自分のコードの多くはルーティンが書いていると話しています(出典1の42分51秒)。 プロンプトを出すのは Boris Cherny 本人ではなく、本人が作ったルーティンです。 講演では、ルーティンを「一段上のプロンプト」と呼んでいます。
講演の実演では、CI がネットワークの時間切れで失敗しました。 ルーティンは CI の失敗を拾い、既知の基盤の問題と判断して、ジョブをやり直しました。 CI は通り、PR の担当者は失敗の表示を見ずに済みました。 Claude Code 自体のコードでは、やり直すだけでなく根本の原因を直させているそうです。
Claude にプロンプトを任せる前提になるのが、Claude が自分の作業を確かめるしくみです。 講演では、Claude が自分の結果を確かめられれば、人は別の仕事をしながら任せられると説明しています(出典1の42分39秒)。
AIにプロンプトを出す役を渡すには、何を使えばよいのか
AIにプロンプトを出す役を渡すには、Claude Code のルーティンを使います。
ルーティンとは、プロンプトとリポジトリとコネクターをまとめて保存し、自動で実行する Claude Code の機能のことです(出典2)。
ルーティンの現在の名前は「cloud scheduled tasks」で、研究プレビューの段階です。
/schedule コマンドか claude.ai の画面で作ります。
ルーティンを動かすきっかけは3種類あり、組み合わせることもできます。
- 日時 毎時、毎晩、毎週のくり返しか、一度きりの日時で動かします。
- API 専用のエンドポイントに HTTP の POST を送ると動きます。
- GitHub PR やリリースなど、リポジトリの出来事に合わせて動きます。
ルーティンは Anthropic のクラウドで動くため、パソコンを閉じていても止まりません。 ルーティンを使えるのは Pro、Max、Team、Enterprise の各プランです。
当社でも、決まった時刻に Claude に任せている作業があります。 新規論文のチェック、YouTube の予約状態とアクセスの推移のチェック、サイトのインデックス未登録のチェック、セキュリティ関連の情報の収集です。
エージェントの記憶とは何か
エージェントの記憶とは、セッションが終わっても消えないテキストの置き場のことです。 Claude Managed Agents では、エージェントの記憶を「memory store」と呼びます(出典3)。 Claude Managed Agents のセッションは、何もしなければ毎回まっさらな状態で始まります。 記憶を付けると、利用者の好み、プロジェクトの決まり、過去の失敗を次のセッションへ持ち越せます。
記憶は、セッションの中ではフォルダとして見えます。 エージェントは、ふだんのファイル操作と同じ道具で記憶を読み書きします。 どこに記憶があるかは、システムプロンプトに自動で書き足されます。
Claude Managed Agents の記憶には、本番で使うための安全策も用意されています(出典3)。
- 版の記録 記憶を変えるたびに、変えられない版が残ります。前の状態に戻せます。
- 読み取り専用 記憶ごとに、書き込みを許すか、読むだけにするかを決められます。
- 同時書き込みの防止 読んだときの内容のハッシュ(content_sha256)を添えて更新します。ほかのエージェントが先に書き換えていれば、更新は通りません。
- 上限 記憶1件は100kB まで、1つの置き場に10,000件までです。大きなファイルを少数置くより、小さなファイルを多く置く使い方が勧められています。
当社の運用では、Claude Code の作業で起きた失敗を記録ファイルに書き、次の作業の前に読ませています。 2026年9月25日、Claude は記事を書く前に文章のスキルを読み込まず、質の低い文章を書きました。 当社は、この失敗と「書く前に必ずスキルを読む」という規則を、記録ファイルに書きました。 読ませるだけでは守られない場合に備えて、同じ規則を機械でも止めるようにしました。 このページを書く直前にも、スキルを読んだかを確かめる仕組みが作業を止め、Claude にスキルを読み直させています。 機械で判定できる規則は、記憶に書くだけでなく、止める仕組みと組み合わせるのが確実です。
dreaming とは何か
dreaming とは、過去のセッションの記録を Claude に読み返させ、記憶を整理し直させる機能のことです(出典4)。 dreaming は Claude Managed Agents の研究プレビューで、使うには申請が必要です。
エージェントは作業の途中で少しずつ記憶を書きます。 そのため、セッションを重ねると、重複、食い違い、古い記述が記憶にたまっていきます。 dreaming は、既存の記憶と、過去のセッション1〜100件を読みます。 dreaming は、重複をまとめ、古い記述を新しい値に置き換え、新しい気づきを書き足した記憶を作ります。
dreaming の結果は、元とは別の記憶として出力されます。 元の記憶は変更されません。 出力を確かめて、使うか捨てるかは人が決めます。 dreaming の処理には数分から数時間かかり、費用は選んだモデルの通常のトークン料金です。
記憶と dreaming を組み合わせると、何が良くなるのか
記憶と dreaming を組み合わせると、エージェントは同じ作業の2回目をより正確にこなせるようになります。 Anthropic の応用AIチームの Lamis は、2026年6月1〜2日に開かれた AI Native DevCon 2026 London の講演で、記憶と dreaming を組み合わせる理由を説明しました(出典5)。
作業の途中で書く記憶には、2つの限界があります。 1つめは、エージェントが目の前の作業と、将来のための記憶の手入れを同時に抱えることです。 2つめは、1つのセッションしか見えないため、セッションをまたいでくり返す失敗に気づけないことです。
dreaming は、作業とは別の時間に、専用の計算資源で多くのセッションを見渡します。 講演では、学校の先生が全員の答案を見て、教科書に抜けている単元を見つける例えが使われました。
講演によると、記憶が整うと、一度でやり切れる作業が増えるため、時間と費用も下がります。 ただし、講演は、記憶が古くなることや、誤った記述が全員に広がる危険も挙げています。 そのため、版の記録、同時書き込みの防止、権限の分け方が欠かせないと話しています。
X で広まった要約のどこが原典と違うのか
X で広まった要約には、発言者、モデル名、数字の3点で原典と違う部分があります。 Lamis の講演は、2026年10月に X で「Anthropic のエンジニアが断言した」として広まりました。 核の部分は本物ですが、講演と公式資料で確かめられない話も混ざっています。
- 「Opus 5.5 にプロンプトを手で打つな」という言い方は、Lamis の講演にありません。
- 「うちのエンジニアの90%はもう作っている」という数字は、確認できませんでした。
- 「人の手を借りずに無限に賢くなる」は言い過ぎです。dreaming の出力を採るかどうかは人が決めます。
- 「プロンプトを出させる」発言は、記憶の講演をした Lamis ではなく、基調講演の Boris Cherny のものです。
こういう盛り気味の投稿に釣られると、フィッシングサイトや悪意あるOSSに誘導される危険が高まる。一度は疑う癖をつけたほうがいいだろう。
同じ時期に X で広まった「AIの迎合」の投稿を論文で確かめた結果は、AIの迎合バイアスとはにまとめています。
AIに自分でプロンプトを書かせるには、何から始めればよいのか
最初の一歩は、プロジェクトの決まりと過去の失敗を CLAUDE.md に書くことです。
次に、毎日同じ手順でくり返している確認作業を1つ選び、ルーティンにします。
結果を機械で確かめられる作業ほど、Claude に任せやすくなります。
自分のパソコンでループを組む手順は、自走ループ・セットアップにまとめてあります。 多くのエージェントで記憶を共有する段階になったら、Claude Managed Agents の記憶と dreaming を検討してください。
出典
- Anthropic「Code with Claude London 2026: Opening Keynote」(2026年10月28日確認)
https://www.youtube.com/watch?v=6amLO7I9xdg - Anthropic「Automate work with scheduled tasks」(2026年10月28日確認)
https://code.claude.com/docs/en/routines - Anthropic「Using agent memory」(2026年10月28日確認)
https://platform.claude.com/docs/en/managed-agents/memory - Anthropic「Dreams」(2026年10月28日確認)
https://platform.claude.com/docs/en/managed-agents/dreams - Tessl「AI Native DevCon 2026 London」Lamis(Anthropic)の講演の文字起こし(2026年10月28日確認)
https://tessl.io/registry/ainativedev/aidevcon-2026-ldn/files/talk-lamis-context-engineering-dreaming/transcript.md - MIT Technology Review「Anthropic's Code with Claude showed off coding's future—whether you like it or not」(2026年5月21日、2026年10月28日確認)
https://www.technologyreview.com/2026/05/21/1137735/anthropics-code-with-claude-showed-off-codings-future-whether-you-like-it-or-not/