SEOは検索順位を上げるための施策だけではない
SEO(検索エンジン最適化)は、自社サイトをGoogleなどの検索結果で上位表示させ、検索ユーザーからのアクセスを増やすための施策と定義されることが多い。確かにそれは事実だが、本質はもっと深いところにある。
SEOは単なる「検索順位を上げる技術」ではなく、ユーザーが何を求めているのか」を知るための分析手法であり、コンテンツ戦略や広告設計にも影響を与えるマーケティングの基盤である。ユーザーが検索で使う言葉は、悩みや願望を表している。つまりSEOは、ユーザー心理を可視化するツールであり、サイトだけでなくマーケティング全体の改善のヒントになりうる。
AIOの台頭からSEOの本質と目的を整理する
AIによる検索体験の進化が、SEOの常識を変えつつあります。
たとえば、Googleの検索結果には従来の青いリンクだけでなく、AIが生成した概要(AIO:AI Overviews)が表示されるようになりました。ユーザーは従来のように広告を含め10個程度のサイトを見比べるのではなく、AIが要約した信頼できそうな答えを一読するだけで済む時代に移行し始めています。
この変化によって、SEO対策の目的も変わりつつあります。かつては「検索結果の上位を取ること」がゴールでしたが、現在はAIに引用されること=AIにとって信頼できる情報源になることが大きな価値になっています。
実際に、弊社クライアントのサイトでも、SEO対策に注力した結果、AI概要への露出が増え、指名検索・問い合わせ数の増加に繋がった事例があります。
もちろん、SEOは今後も消えることはありません。しかし、「Googleで1位を取る」という視点から、「AIが正確な情報として取り上げるサイトを作る」ことが、これからのSEO戦略の本質となるのかもしれません。
そのために必要なのは、ユーザーの疑問に対して、簡潔かつ網羅的に答えるページを作ることだと感じています。そしてもう一歩進んで、「AIが提示する答えを補完・修正するような視点」や「代替価値観を提供する情報」も重要性を増していると考えています。
AIは正解を導く力を持っていますが、人間の多様な価値観やコンテキストまでを完全に読み取れるわけではありません。
だからこそ、AIの限界を補完できる人間的なコンテンツこそが、これからのSEOにおいて差別化の鍵になります。
AI時代のイノベーション|なぜSEO対策の再定義が必要なのか?
AI検索(AIO)の普及により、SEOの環境は確実に変化しています。
従来のように「上位表示されればクリックされる」という前提が崩れつつある中、いま必要なのは、SEO戦略そのもののノベーションです。
単なるキーワードの詰め込みや量産記事ではなく、AIに引用されるような構造・文脈・具体性を持った情報設計こそが、これからの差別化のカギとなります。
ただし、AIに拾われること自体がゴールではありません。
SEOを通じて得たユーザー心理や検索ニーズを、SNS・メルマガ・YouTube・広告LPなど他チャネルにも展開し、ブランドとユーザーの接点を築いていくことが、マーケティング全体の成果へとつながります。
SEOだけで完結しない。
だからこそ、SEOの成果を他施策に活用できる状態で設計することが、これからの「本当に意味のあるSEO戦略」と言えるでしょう。
補足:AIO(AI Overviews)とは?
AIOは、Googleなどの検索エンジンがAIを使って検索結果の最上部に生成する要約表示機能です。2023年以降、本格的にテスト運用が始まり、2024年以降は米国や一部地域で本実装されています。AIは複数の信頼性の高いWebサイトを元に要約を生成します。
そのため、自社サイトが「信頼できる情報源」としてAIに認識されることは、今後の集客戦略において極めて重要です。
SEO対策の目的と重視すべき視点
本来、成果を出すことが目的であることだったはずが、集客数だけに目を向けるようになると本末転倒です。
目的を見失うことなく、マーケティング全体から見たSEO対策の立ち位置を見失わないようにしてください。
重視すべきはCVR(コンバージョン率)の改善
SEOによる集客は、あくまでも手段であり、最終的な目的はコンバージョン(成果)である。筆者がもっとも重視しているのは、検索から訪れたユーザーが実際に問い合わせや購入といった行動につながったかどうかだ。
このため、単に流入数を追うのではなく、ヒートマップなどのツールでユーザー行動を可視化し、どの情報が刺さり、どこで離脱しているのかを分析する。SEOとUX改善を組み合わせて施策を展開することで、CVRを着実に高めていくアプローチが効果的である。
流入数は質で評価すべき|露出のコントロールも必要
SEOの第二の目的として検索流入の増加が挙げられるが、ここで重要なのは「どれだけ集まったか」ではなく、「誰が集まったか」である。多くのサイトが、キーワード設計を誤ったことで、目的に合わないユーザーを集めてしまっている。
筆者は、インデックスキーワードの範囲と質の最適化を重視している。また、不要なキーワードで露出しないよう対策することも重要だ。意味のないアクセスはサーバー負荷と離脱率を上げるだけで、ビジネスに貢献しない。適切なキーワード選定と、不要な流入の制御の両輪が求められる。
検索キーワードはユーザー心理の入り口になる
ユーザーが何気なく入力する検索キーワードには、背景にある行動や感情が隠れている。「〇〇 方法」「〇〇 比較」といった検索には、具体的な行動意図が込められており、それを読み解くことで、どのような情報を提供すればよいかが見えてくる。
このように、SEO対策は単なる施策の羅列ではなく、ユーザーとのコミュニケーションの入口である。実際、検索キーワードの選定や流入キーワードの分析を通じて、広告の訴求内容やLPの構成が最適化される例は多い。SEOはWeb戦略の根幹を成す思考の起点といえる。
SEOはユーザーにとって使いやすいサイトづくりの指針でもある
検索エンジンに好まれるサイトは、概してユーザーにとっても使いやすい。たとえば、ページ構造が明確である、読み込みが速い、スマートフォンでも見やすい、情報が整理されているといった要素は、検索順位だけでなくユーザー満足度の向上にもつながる。
SEOに取り組むことは、単に機械に最適化するのではなく、結果的に「ユーザーフレンドリーなサイトを作る」ことにつながる。構造や技術を整えるという意味で、SEOは仕組みづくりであると同時に、ユーザー体験設計の指針とも言える。
ブランディング効果は限定的|過信は禁物
SEOによって得られるブランディング効果については、筆者は慎重に捉えている。検索上位にあることで、一定の信頼感や専門性が伝わることは確かだが、それが即座にブランド構築につながるわけではない。
むしろ、ブランディングにはSNSや広告の方が有効だと考える。覚えてもらうのではなく、「思い出してもらう」機会を増やすことが重要であり、そのためには接触頻度を上げる必要がある。記事内容の専門性がブランドイメージに貢献することはあっても、SEOだけではその効果は計測しづらく、限定的である。
有効なブランディング施策はSEO以外との連動にある
指名検索を増やすには、ネット内外の施策が重要になる。たとえば、有名人のインタビュー記事、有名メディアへの寄稿、リアルイベントや展示会などとの連携は、信頼性と認知度の両面で高い効果をもたらす。
SEOは、その補完として活用すべきであり、単体でブランドを築くという考え方は現実的ではない。SEOは何かを探している人に見つけられるための施策であり、ブランドを形づくるためには、戦略的に接触点を設けていく必要がある。
SEOは取り組みやすいが万能ではない
SEOの利点は改善しやすさと再現性にある
SEOの大きな利点の一つは、比較的低コストで始められ、施策の結果を分析・改善しやすい点にある。広告のように費用がかかり続けるモデルではないため、中長期的には費用対効果が高くなりやすい。
また、仮に最初の取り組みが失敗しても、ページの修正や構造の見直しによって成果を回復できる再現性の高さも魅力だ。Web施策の中でもPDCAが回しやすい領域であり、安定的な運用が可能となる。
限界はGoogle次第であるという点
一方で、SEOには明確な限界もある。最大のリスクは、Googleのアルゴリズム変更という外的要因に大きく影響を受ける点だ。アップデートのたびに順位が乱高下し、トラフィックが激減するケースもある。
さらに、指名検索やブランドロイヤルティを高めるには、SEO単体では限界がある。SNS、広告、オフラインの施策と組み合わせて、総合的なブランド構築を行う必要がある。SEOはあくまでもマーケティングの一要素に過ぎない。
よくある失敗|記事数やサイトを増やすことが目的化してしまう
SEO対策初心者がよく陥るのが、「記事を増やすこと自体が目的になってしまう」状態です。
本来は成果を得るために取り組んでいたはずなのに、記事数やサイト数の増加だけを目標にしてしまうと、方向性を見失います。
SEOに取り組む企業の中には、制作会社の提案通りに複数サイトを乱立させてしまい、結果的にどのメディアも中途半端な状態に終わってしまうケースが少なくない。
中級者でも、作業が形骸化し、書くだけで手応えが全く得られない状態に陥っているのに打開策が見いだせないケースはあるのです。
数字ではなく成果を見る視点を持ち直すことが必要です。
重要なのは、ひとつのメディアをしっかり作り込み、戦略的に運用していくこと。
記事数やドメイン数の多さが成果を保証するわけではない。
コンテンツの質とキーワードの精度、そしてユーザーとの接点の作り方こそが、SEOで成果を上げるために必要な要素である。
成果を重視したSEO運用が本質である
サイトを作ること自体が目的ではない。記事を増やすこともまた目的ではない。目指すべきは、ビジネス上の成果を上げることであり、そのためには意味のあるユーザーを的確に集める必要がある。
CVに至らない流入や、ビジネスと無関係なトラフィックを増やしても意味はない。SEOはあくまでも成果のための手段であり、その効果を最大化するには、ターゲットを絞った明確な意図と、分析に基づいた改善を続ける姿勢が欠かせない。
技術的施策1|対応すべきは遅すぎるケース。速度最適化の限界
表示速度の改善は、テクニカルSEOにおいて定番の施策だが、筆者はその効果が出るのは極端に表示が遅い場合に限られると考えている。実際、表示速度を極端に上げた結果、コンテンツの印象が変化してしまったのか、逆に成果が下がった事例もあった。
速度改善はあくまでも最低限のラインを確保する施策であり、速度だけを追い求めてUXを犠牲にすることは避けるべきである。重要なのは、表示速度の数値そのものよりも、ユーザーがストレスなく目的の情報にたどり着ける体験の設計である。
技術的施策2|構造化データと責任の所在の明示が評価される
構造化データの実装は、検索エンジンの理解を助け、特定の業種では検索結果上での視認性向上にも貢献する。特に小売系では、レビューや評価スコアを構造化データで明示することで、リッチリザルトとして表示されやすくなり、CTR(クリック率)向上に直結するケースもある。
また、筆者が重視しているのは「誰が書いたか」の明確化である。これはE-E-A-Tの観点での権威性よりも、コンテンツの責任の所在をはっきりさせることが信頼につながると考えている。著者情報、会社情報、監修体制など、透明性のある情報開示が評価される時代において、この点は軽視できない。
技術的施策3|内製か外注か。知見を持つのは内側が前提
筆者自身はSEO業務の受託側としてクライアントと関わっているが、テクニカルな対応も含めて、基本は内製が望ましいと考えている。なぜなら、運用の中で得られる知見は、内側に蓄積されていくべきものであり、それが中長期的な自立的運用につながるからだ。
外注は「実装」や「スピード対応」ではなく、「ノウハウ移管」のために使うべきだと位置づけている。依存するのではなく、内製化へ向けた移行プロセスとして活用することで、より強固なSEO運用体制が築ける。
SEO施策の優先順位は、インパクトと合意形成で決まる
SEO施策は、多岐にわたる選択肢があるが、すべてを同時に実施することは現実的ではない。そのため筆者は、施策の優先順位を以下の3つの軸で決めている。
- 第一に、成果インパクトが大きいかどうか。検索順位や流入ではなく、コンバージョンやLTVに影響を与えるかが基準となる。
- 第二に、クライアント側の実施難易度が低いかどうか。実装や対応が複雑すぎると、施策が継続されず形骸化するリスクがある。
- 第三に、施策に対する組織内の合意が形成されているかどうか。関係者が施策の意義を理解し、反対者がいない状態で進めることが重要であり、合意形成は施策実行の前提条件である。
コストは場合によってかかってもよいが、それが「共通理解のもとでの投資」であることが成功のカギとなる。
SEOとは何か──成果を生むユーザー理解のための軸である
SEOとは、単に検索順位を上げるための技術やノウハウではない。
本質は「ユーザーを理解するための軸を持つこと」にある。マーケティング活動の中で、SEOはごく一部にすぎないが、その一部にこそ、ユーザー心理を読み解くヒントが詰まっている。
筆者が実際に関わったプロジェクトの中には、ユーザーが普段検索で使わないようなキーワードだが、深層心理では確かに使っていたであろう言葉を利用したことで、売上が一気に跳ね上がったケースもある。SEOは、そうした「見えにくい声」を見つけるための、非常に実践的な道具でもある。
SEOに初めて取り組む人へ伝えたいこと
まず大事なのは、「判断軸を持つこと」。
外部のパートナーや制作会社、社内の複数の意見を取り入れながらも、最終的には自社としての方針と覚悟を持って取り組まなければ、SEOは長続きしない。SEOは中長期的な取り組みであり、「続けられる体制」を作るところからスタートすべきだ。
また、SEOはあくまで全体戦略の一部でしかない。
広告やSNSなど、他のマーケティング施策と連動させることで、初めて最大の効果を発揮する。
成果を出している個人ブログの運営者の手法が、企業サイトで通用するとは限らない。作業者の適性、社内の温度感、そして体制の継続性、それらすべてが成果に直結する。
よくある誤解と、取り組む際の注意点
SEOを「外注すれば済む仕事」として捉えると、失敗するケースが多い。高額な見積もりを提示され、丸投げしてしまった結果、期待した効果が得られなかったという相談は少なくない。
そもそも、自社にしか持っていない情報や現場の知見は、外注先には伝わらない。
だからこそ、SEO施策には自分たちも関わる意識が重要だ。
「自社のビジネスを誰よりも理解しているのは自分たちである」という前提に立ち、施策に参加することが、成果への最短ルートになる。
SEOを通じて得られた最大の学び
「広告で成果が出ないからSEOに取り組む」という発想は、本質的ではない。
むしろ、SEOでユーザー理解を深め、それを広告や他の施策に活かすという順番こそが、理にかなっている。
SEOを実践することで、徐々にユーザーの心の動きやニーズの変化が見えてくる。そうして得た洞察は、コンテンツの方向性やメッセージ設計に一貫性を与え、マーケティング全体の軸をつくる力となる。
SEOとは、SEO対策ツールに対しての習熟やアルゴリズムへの対応ではなく、「ユーザーの心理に真っ直ぐ向き合う」ための習慣である。そして、その地味な作業の積み重ねが、ビジネスの成果を支える確かな土台となっていきます。

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