「アニメーションを作りたいけれど、After Effects の操作が難しい」「毎回同じようなモーション素材を手作業で量産するのが非効率」という課題を、Claude が自然言語で AE を直接操作することで解決できるようになっています。
MCP(Model Context Protocol)という仕組みを使って Claude と After Effects を接続するツールが、複数登場しています。この記事では主要な実装を比較・解説し、実際にどこまでできるのかを整理します。
MCP 連携とは何か
MCP は Anthropic が策定したオープン標準プロトコルで、AI モデルと外部ツールを接続するための規格です。After Effects 向け MCP サーバーを使うと、Claude への自然言語の指示が After Effects の操作コマンドに変換され、そのままアプリケーションが動きます。
通信の流れ:
Claude(自然言語の指示)
↓
MCP サーバー(命令をJSON形式のコマンドに変換)
↓
CEP 拡張パネル(AE内のブリッジ)
↓
After Effects(実際に操作が実行される)
↓
実行結果をClaudeに返却
CEP(Common Extensibility Platform)は After Effects が公式に提供する拡張機能の仕組みで、ExtendScript を通じてアプリケーション内部を制御します。MCP サーバーはこの CEP 拡張をバックグラウンドから呼び出す形で動作します。
主要ツール比較
現在、以下の3つが確認されています。
| ツール | 開発者 | ツール数 | 技術 | ライセンス | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| after-effects-mcp | ishu86 | 70以上 | Node.js | MIT | 最大規模。モーショングラフィクステンプレまで対応 |
| after-effects-mcp | Dakkshin | 19 | TypeScript | MIT | シンプル・軽量。AE 2022以降対応 |
| Claude Scripter | aescripts.com | 非公開 | 非公開 | 有料 | AE公式スクリプト販売サイト掲載。詳細は公式参照 |
ishu86版:70以上のツールを持つ本命
対応環境
- After Effects 2024 以降
- Node.js 18 以上
- macOS・Windows 両対応
できること
コンポジション・プロジェクト管理
プロジェクトの作成・保存・素材インポートを自然言語で指示できます。「1920×1080、30fps、10秒のコンポを作って」と話しかけるだけで設定済みのコンポジションが出来上がります。
レイヤー操作
| レイヤー種別 | 具体的な操作 |
|---|---|
| テキストレイヤー | フォント・サイズ・色・位置の指定まで一括 |
| シェイプレイヤー | 矩形・円・パスの作成 |
| ソリッドレイヤー | 背景色の一括生成 |
| ヌルオブジェクト | 親子関係の設定 |
| プリコンポーズ | 複数レイヤーの整理 |
アニメーション・キーフレーム
キーフレームの打ち込みはもちろん、apply_easy_ease でイージングを一括適用できます。タイミングの調整も「全キーフレームを1.5倍に引き延ばして」のような指示で対応します。
エクスプレッション(20以上のテンプレート)
以下のようなエクスプレッションをテンプレートから即座に適用できます。
wiggle(2, 30)— ランダムな揺れloopOut("cycle")— ループアニメーション- Spring Physics — バネ物理演算(Remotion スタイル)
- ウィグル・物理演算系各種
モーショングラフィクステンプレート
- ローワーサード(テロップ下部テキスト)
- タイトルカード
- トランジション
- フェード・スライド・スケール・回転の各プリセット
エフェクトルック
- シネマティック
- VHS(レトロ感)
- ネオン
- その他スタイリングエフェクト
セットアップ手順
# 1. リポジトリをクローン
git clone https://github.com/ishu86/after-effects-mcp
cd after-effects-mcp
npm install
# 2. CEP拡張機能をインストール
# リポジトリ内のインストールスクリプトを実行
# 3. Claude Desktop の設定ファイル(claude_desktop_config.json)に追記
{
"mcpServers": {
"after-effects": {
"command": "node",
"args": ["/path/to/after-effects-mcp/index.js"]
}
}
}
- After Effects を起動して CEP 拡張パネル(MCP Bridge)を表示する。
- Claude Desktop から After Effects に話しかける。
通信の仕組み: MCP サーバーと CEP 拡張はファイルベースの IPC で通信し、約 100ms のポーリング間隔で命令を受け渡します。
Dakkshin版:TypeScript製の軽量実装
対応環境
- After Effects 2022 以降(より広い対応範囲)
- Node.js v14 以上
- TypeScript / esbuild ベースでビルドが高速
対応ツール(19個)
ishu86版より少ないですが、基本操作はカバーしています。
create-composition— コンポジション作成setLayerKeyframe— キーフレーム設定setLayerExpression— エクスプレッション適用createCamera— カメラレイヤー作成(ishu86版との差別化点のひとつ)setLayerMask— マスク設定- レイヤーのブレンドモード・トラックマット対応
セットアップ手順
git clone https://github.com/Dakkshin/after-effects-mcp
cd after-effects-mcp
npm install
npm run build
npm run install-bridge # AEパネルのインストール
npm start
「まずシンプルに試したい」「AE 2022 を使っている」場合はこちらが選択肢に入ります。
宣伝素材の量産への活用
Claude × AE MCP連携が特に力を発揮するのは、同じ構造のモーション素材を大量に作るケースです。
例:SNS 広告用バナーアニメーション
手動では「テキスト変更 → キーフレーム調整 → エクスポート」を繰り返す作業が、プロンプトを変えるだけで自動化できます。
「商品名をAとして、フェードイン0.5秒・静止2秒・フェードアウト0.5秒の
テキストアニメーションを作って。フォントはNoto Sans、
サイズ60px、色は白、背景はネイビー」
この指示一つで、テキストレイヤーの作成からキーフレーム・イージング適用まで一括実行されます。
例:ローワーサード(テロップ)の量産
動画の登場人物ごとにテロップを量産するとき、ishu86版の create_lower_third ツールを使えば、名前と肩書きを指定するだけで統一デザインのテロップが生成されます。
例:エクスプレッションの一括適用
「このコンポの全テキストレイヤーにウィグル(1, 5)を適用して」という指示で、手作業でのエクスプレッション入力を省略できます。
注意点・現時点の限界
レンダリングは自動化されていない
MCP 連携はコンポジションの編集を自動化しますが、レンダリング(出力)のキューへの追加や実行は別途操作が必要です。
複雑な演出には人の判断が必要
「かっこいいオープニングを作って」のような抽象的な指示は、Claude が解釈を試みますが結果にはばらつきがあります。具体的なパラメータを伝えるほど精度が上がります。
CEP 拡張のインストール権限
macOS ではシステム環境設定でスクリプトの実行を許可する必要があります。Windows でも環境によって UAC の確認が入ります。
AE バージョンの確認
ishu86版は After Effects 2024 以降が必要なため、古いバージョンを使っている場合は Dakkshin版(2022以降対応)が選択肢になります。
Claude Desktop が前提
現時点ではいずれのツールも Claude Desktop(デスクトップアプリ)経由での使用が基本です。Claude Code CLI からも MCP サーバーとして接続することは技術的に可能です。
まとめ
Claude × After Effects MCP 連携は、モーショングラフィクスの制作フローを大きく変える可能性があります。
- 本格的に使いたい場合: ishu86版(70以上のツール、Spring Physics などの高度なテンプレート)
- まず試したい・AE 2022 を使っている場合: Dakkshin版(シンプル、TypeScript製)
- 有料ツールを検討する場合: Claude Scripter(aescripts.com 掲載、詳細は公式参照)
自然言語でアニメーションを組めるという体験は、AE に不慣れな人にとっての参入障壁を大きく下げます。宣伝素材の量産や、定型フォーマットへの内容流し込みといった反復作業から解放されることで、クリエイティブな判断に集中できる時間が増えるはずです。
参考リンク: